表題番号:1997A-312 日付:2004/03/07
研究課題強相関電子材料LaxSr1-xVO3の構造相転移と金属-絶縁体転移
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 小山 泰正
研究成果概要
3d遷移金属酸化物LaMO3は、多体効果によって特徴付けられる強相関電子材料の一つであり、単純ペロブスカイト型構造を有している。本研究では、これら遷移金属酸化物の中でLaxSr1-xVO3を取り上げる。ここで、本酸化物ではx=0.8付近で金属-絶縁体転移を起こすことが知られているものの、この金属-絶縁体転移での格子系の役割、特に本酸化物での構造相転移と電子状態との相関については明らかではない。そこで本研究では、LaxSr1-xVO3における構造相転移の有無、その特徴、さらに強相関電子状態への構造相転移の影響を明らかにするため、本酸化物での結晶構造ならびに局所構造を反映する微細組織の特徴を透過型電子顕微鏡を用いて調べた。
 室温で得られた電子回折図形の解析から、LaxSr1-xVO3の室温での結晶構造は、0.0≦x<0.1で立方晶Pm3m構造、0.1≦x≦0.6で菱面体晶Rc構造、さらに0.6<x<0.8の二相共存域を経て0.8≦x≦1.0では斜方晶Pbnm構造へと変化することが分かった。ここで、この結果から、x=0.7付近においてRc―Pbnm構造相転移の存在が予想される。そこで、室温でRc構造を有するx=0.6試料を用いて、低温領域での相転移の有無ならびにその特徴を調べた。その結果、冷却により約150KでPbnm構造へ転移すること、相転移点以下でのRcとPbnm領域の共存が明らかとなった。このことは、Rc―Pbnm構造相転移が強い一次相転移であることを示している。また、Pbnm分域中にはVO6八面体の傾斜に関係する反位相境界も観察された。