表題番号:1997A-305 日付:2002/02/25
研究課題電界イオン化真空計の研究開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 大島 忠平
研究成果概要
極限空間の10{-10}Pa以下の圧力を測定しようとすると、従来の電離真空計では、以下に記述した幾つかの問題が発生し、測定が困難となる。(1)電離を促すための電子は極高真空領域では、残留気体と衝突する確率が減少し(10{-7}%程度)、ほとんど全ての電子は電離作用には寄与せず、グリッドに衝突し、雑音(軟X線や電子励起脱離イオン)の発生源となる。このため、この雑音除去の機構が必要になる。更に、この電子発生のために、真空計内部で約20Wのエネルギ-消費があり、このエネルギ-消費が圧力計測を乱す元凶となっている。 本研究では、エネルギ-消費を数桁に渡って下げた電界イオン化真空計の可能性を検討した。タングステン金属針の鋭く先端に高電圧を印加し、10{8}V/cmの強電界を使って、この電界中に侵入した残留気体の電子トンネルでイオン化させ、このイオンをチャンネルトロンで1個1個数える。真空槽内部にXeガスを導入し、ライボルト社製のエクストラクタ-真空計を参照真空計として、電界イオン真空計の校正を行った結果、以下の結論を得た。
 (1)10{-8}Paから10{-4}Paの圧力領域で、参照真空計の示す圧力に対して、比例関係が確認され、真空計として動作することを確認した。
 (2)測定で消費されたエネルギ-は、10{-6}W以下である。また当初の目的通り、 軟X線雑音、電子衝撃雑音は皆無にすることができた。
 (3)残された問題は感度であり、10{-10}Pa以下の測定には、感度を2桁以上向上させる必要がある。今後、微小マルチイオン源を利用し、10{4}倍の感度向上を試みたい。
研究成果の発表
C. Oshima, H. Fuji, T. Yamada, S. Uchiyama, K. Nagaoka Coustruction of a low-temperature Gun, Applied Surface sci 624(1999).