表題番号:1997A-303 日付:2002/02/25
研究課題超臨界熱水溶液中における鉛の溶存状態に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 内田 悦生
研究成果概要
今までに第一遷移金属(Mn, Fe, Co, Ni, Zn)に対して行って来た実験方法と同様な方法を用いて鉛のトリクロロ錯体の生成定数を求めた。実験には、CaTiO3-PbTiO3-CaCl2-PbCl2-NaCl-H2O系とPbS-ZnS-PbCl2-ZnCl2-NaCl-H2O系の2つの系を用いた。常温・常圧におけるPbCl2の溶解度が低いため、PbTiO3およびPbSを出発物質とした場合のみしか実験を行うことが出来なかった。実験は、2Nの塩濃度において行い、溶液のCa/(Ca+Pb)比およびPb/(Pb+Zn)比に及ぼすNaClの影響を調べた。実験条件は、1kbに対しては500、600、700℃とし、0.5kbに対しては600℃とした。
 実験終了後、液相と固相を分離し、固相はPbTiO3とCaTiO3またはPbSとZnSの2相が共存しているかどうかX線回折装置を使用して確かめ、液相はICP発光分析装置を用いて陽イオン分析を行った。そして、得られた実験結果を熱力学的に解析し、鉛のトリクロロ錯体の生成定数を求めた。
 CaTiO3系の実験では、PbTiO3が1kb、700℃の条件下で不安定であるため実験を行うことが出来なかった。また、PbS-ZnS系に対しては、まだ、0.5kb、600℃における実験が終了していない。しかしながら、全体的には、今までに実験を行った第一遷移金属(Fe, Mn, Co, Ni, Zn)と同様に鉛も高温・低圧条件下でトリクロロ錯体を生成し易いことが明らかとなった。しかしながら、その生成定数は、上記遷移金属に比べて低い。残念ながら、CaTiO3-PbTiO3系とPbS-ZnS系の実験結果の一致は必ずしも良くはなく、この原因を今後明らかにしていく予定である。
研究成果の発表(予定)
Aqueous Speciation of lead chloride in supercritical hydrothermal solution (Geochemical Journal)