表題番号:1997A-302 日付:2002/02/25
研究課題植物系バイオマスの有効利用を目的としたキシランからのクエン酸生産技術の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 宇佐美 昭次
研究成果概要
筆者らは安価な原料からのクエン酸生産を目的として、植物系バイオマス資源の利用について検討しており、すでにセロビオースやセルロース加水分解物からのクエン生産に成功している。一方、セルロース系バイオマスにはヘミセルロースが20~35%含まれており、その主要成分としてキシランがある。本研究においては、キシランおよびキシラン加水分解物からのクエン酸生産試験を行った。
 供試菌としてはAspergillus niger Yang no.2 を使用し、サトウキビ搾り粕であるバガスを担体として液体培地を染み込ませて行う半固体培養法により発酵試験を行った。まず、キシランの加水分解により生じる単糖キシロース、アラビノースをそれぞれ唯一の炭素源とした試験を行い、供与糖140 g/l から5日間の培養でそれぞれ72.4 g/l, 52.6g/l のクエン酸が生産されることを確認した。つぎに、市販のセルラーゼ製剤によりキシランを加水分解し、その加水分解物からの発酵試験を行った。還元糖量として100 g/l のキシラン加水分解物を供与した場合には、3日間で51.6 g/lのクエン酸が生産された。以上の結果より、キシランの構成成分からの生産が可能であることが判明したため、キシランを直接炭素源とした生産試験を行った。キシラン粉末を培地溶液当たり140 g/lとなるように懸濁してバガスと混合した培地を使用した場合、培地中へのキシラナーゼ生産が確認され、3日間で39.6 g/l のクエン酸が生産された。本研究結果は、キシランからのクエン酸生産に関する初めての成功例であり、供試菌のキシラナーゼ生産性を向上させてキシラン分解を効率的に行うなどの方法によりクエン酸生産性を改良することが可能と考えられる。
研究成果の発表:1999年1月、kohtaro kirimura, Taisei Watanabe, Tadahiro Sunagawa, and Shoji Usami, Citric Acid Production from Xylan and Xylan Hydrolysate by Semi-Solid Culture of Aspergillus niger, Biosci. Biotech. Biochem., 63, 226-228(1999).