表題番号:1997A-296 日付:2013/04/28
研究課題キリスト教のヨーロッパ土着化の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 田島 照久
研究成果概要
現代聖書学のいわゆる歴史批判的方法による成果は『福音書』の成立に関わる歴史的文脈を明らかにしてきた。そうした聖書研究の中でも、カルフォルニアの「イエス・セミナー」は最近「The Five Gospels」という英語福音書を刊行した。この英語福音書の特色は、セミナーの専門分野研究者(フェロー)の討論と投票とによってイエスの言葉として伝えられている福音書の記述を真偽判定して4色の色分け印刷としたところにある。
 本特定課題研究では、この資料を用いつつ、イエスの「山上の説教」のマタイによる記述「心の貧しき者」は本来のイエスの言葉では「貧しき者」であったという仮説を立て、これを「共観福音書」の内で立証しつつ、イエスの教えとは根本的に異なる「心の貧しき者」という徳目が、中世キリスト教の内では、中心的テーマとなっていったことを、13世紀のマイスター・エックハルトのテキストに沿って実証し、キリスト教のヨーロッパ土着化の例として提示した。
研究成果の発表
1998年1月22日 「キリスト教のヨーロッパ的変容―中世における貧の霊性―」、『東西における知の探究―峰島旭雄教授古稀記念論集』(北樹出版)所録。