表題番号:1997A-289 日付:2002/02/25
研究課題緑色硫黄光合成細菌光化学反応中心複合体電子伝達系の分光学的解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助手 楠元 範明
研究成果概要
緑色硫黄光合成細菌の光化学反応中心(PS-C)は光化学反応系I(PSI)と相同性が高いことが示唆されている。PSIにおいては、PsaDサブユニットがFdを結合することにより、末端電子受容体FBからFdへと効率よく電子伝達がなされるが、PS-Cではそのしくみは明らかではない。そこでFdを精製し、PS-CからFdへの電子伝達の情報を得ることを目的として研究を進めた。
 緑色硫黄細菌Chlorobium tepidumより嫌気条件下で調製したPS-C複合体は、65(Core: PscA), 41(FMO), 32(Fe-S: PscB), 23(Cyt c: PscC), 18 kDa (Unknown: PscD)の5種のサブユニットにより構成され、Cyt cから末端電子受容体Fe-Sまでの高い電子伝達活性を持っていた。
 同様に菌体を破砕し、DEAE陰イオン交換クロマトグラフィー、Sephadexゲルバーミエイションクロマトグラフィー、mono Q陰イオン交換クロマトグラフィー、Superdex75ゲルバーミエイションクロマトグラフィーを経て、Fdを精製した。最終精製標品においてはFdの精製度を表すひとつの指標であるA375nm/A280nmの値が0.7を超えており、高度に精製されていることが示された。
 これらのC.tepidum PS-C,Fdとホウレンソウより精製したFNRを用い、NADP+光還元活性を測定したところ313 μmols/mg BChla/hr
という高い活性が得られた。C.tepidumFdの代わりにホウレンソウFdを用いた場合は光還元活性は1/3程度であった。これにより、PS-Cは高い効率でC.tepidum Fdに電子を渡すことができることが示された。