表題番号:1997A-280 日付:2002/02/25
研究課題中国通俗小説における神々の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 堀  誠
研究成果概要
中国通俗小説の多くのものが、往時の人々の生々しい日常の生きざまを反映している。人間の営みには信心や俗信・俗諺が息づくとともに、小説中にも人々の信心・信仰の模様などが活写されたりもする。信仰対象となって出現する神々には、名高い関帝もいれば、杭州の石姥祠などマイナーな神々の姿も見出すことができ、その信仰面などもリアルに描出される。こうした神々の素性、信仰的な特性を調査するとともに、中国通俗小説類における情節内容の特徴、ならびに作品相互の関連性をまとめるべく計画を推進した。     
 この研究の対象とした作品の中には、白蓮教・聞香教などの宗教反乱を題材とするものもある。たとえば、天啓・徐洪儒の反乱を小説化したらしい『新編皇明通俗演義七曜平妖全伝』6巻72回(北京図書館蔵)といった稀覯書の類も調査しえた。ただ中国国内に蔵される稀覯書は、全面的にはマイクロ複写等の手段に頼れないことも多いため、予想外の難しさも伴ったが、今回制度的に初めて海外調査費目の認められたことの意義を実感している。
 神々に関する記述やストーリーの集積、ファイル化の作業を通して、中国通俗小説の世界において改めて存在の大きさを認識したのは、九天玄女なる女神についてである。この神格を著名ならしめている『水滸伝』を源泉として、その余響余波は多方面に及んでいる。この女神のルーツ・神格のありよう、ならびに他小説との関わり等については、ある程度体系的に追うことができた。成果の一つとして特に記しておきたい。