表題番号:1997A-275 日付:2002/02/25
研究課題九州肥後帯の地体構造の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 高木 秀雄
研究成果概要
今回、九州肥後帯(大分-熊本構造線と臼杵-八代構造線に挟まれた地帯)の地体構造の解明を目的として、大分市南方の白亜系大野川層群中の花崗岩礫について、その岩石学的諸性質を明らかにするとともに鉱物分離を行い、4岩石試料についてK-Ar年代を決定した。また、肥後帯との地質学的関連性を評価するため、四国西部三波川帯にナップをなす唐崎マイロナイト中の角閃石についても、同様にK-Ar年代測定を行った。その結果、下記のことが明らかとなった。
1.大野川層群霊山層中の花崗岩礫はチタン鉄鉱系列の花崗岩に属し、トーナル岩、花崗閃緑岩、花崗岩に属する。組成的には、Srの量が350ppm前後と比較的高く、Y-Nb図、Rb-(Y+Nb)図においては、火山弧起源のテクトニックセッティングを示す。
2.K-Ar年代は、角閃石4試料、黒雲母1試料ともよく一致し、103~108Maの値が得られた。
3.岩石学的性質と年代値だけからみると、この花崗岩礫の供給源として、領家帯と肥後帯(古領家帯)のどちらかを限定することは難しく、今後の検討課題が残された。
4.唐崎マイロナイト中の角閃石のK-Ar年代は119Maと122Maとなり、大島変成岩や寄居変成岩などの古領家帯のメンバーおよび肥後変成岩の年代と一致する結果が得られた。
 以上より、九州肥後帯の基盤岩類には、関東山地の場合と同様ペルム紀と白亜紀アルビアン期の花崗岩類・変成岩類がかつては広く分布しており、それらが対の変成帯の間に挟まれていた古領家帯をなしていたことが、明確にされた。その古領家帯は日本列島よりも未成熟の島弧を構成していたものと推定される。