表題番号:1997A-251 日付:2002/02/25
研究課題EU企業集中規制の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 鳥山 恭一
研究成果概要
ヨーロッパ経済共同体(EEC)を創設した1957年のEEC条約は、ECの内部における企業間の競争を確保するために、企業間のカルテル等の規制(85条)と市場における企業の支配的な地位の濫用の規制(86条)を定めていた。しかし、1951年のヨーロッパ石炭鉄鋼共同体条約、1957年のヨーロッパ原子力共同体条約とは異なって、すべての経済分野を対象とするEEC条約には、企業間の合併、企業取得等の企業集中行為を事前に規制する規定は定められていなかった。
 このため、EC委員会は、EEC条約が定めるカルテル規制と支配的地位の濫用規制を適用することによって、企業集中行為をも事後的に規制してきた。他方で、EC委員会は、企業集中行為に対する事前の規制を制度化するために規則の制定作業を進めてきた。この企業集中規制のための規則は、1973年に規則案が提出されて以来、16年に及ぶ作業を経て、1989年12月21日に閣僚理事会で採択されるに至った。
 もっとも、こうして制定された企業集中規制は、EC委員会と構成国、あるいは構成国相互間の政治的な妥協の産物であるといってよく、規制対象が限定的にすぎる点、集中行為を規制する基準が不明確である点などが、制定当初から指摘されていた。この規則それ自体において、1993年末までに規制の内容を見直すことが予定されていた(1条3、9条10)。しかし、その作業は大幅に遅れ、EU委員会は1996年1月31日に改正のためのグリーン・ペーパーを公表し、さらに、1996年9月12日に企業集中規制の改正案を閣僚理事会に提出した。その後、本研究の研究期間内である1997年6月30日に、企業集中規制を改正する規則が閣僚理事会で採択されている。
 現在、改正の内容をその理由も含めて検討し整理しており、近くその研究成果を公表する予定である。