表題番号:1997A-243 日付:2002/02/25
研究課題中国・莱蕪市にみる土地所有・使用権の実態と村有企業の資本蓄積
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 堀口 健治
研究成果概要
中国憲法は、都市は国有、農村は集団所有と規定している。しかし、都市の国有は、実際は地方政府有の性格が強いことはすでにあきらかにしてきた(土地使用権の売却収入は地方政府に主に入いることを指摘してきた―例えば西川編『開放中国・国際化のゆくえ』有信堂、1995)。だが集団所有は多くは村所有と理解されているが、その村による土地配分、再割当などの原理、原則は不明な部分が多い。莱蕪市でここ数年間の継続調査によると、房幹村の村民委員会による村有企業のための農地転用は、その転用された農地の元利用者の優先雇用を工場で約束することで、農民の了解をえているとしている。しかし村外からの雇用者もあるくらいに多くの雇用を行っているので、転用された農民と、工場に雇われているものの転用をうけず従来の農地利用面積のままの農民も同時に存在し、この不平等の解決は数年に1回行われる1人当たりの口糧田の面積を調整することでなされているようである。村有企業は村出資の企業であるために、農民の農地および住宅利用と同様に土地使用料を払っていない。しかし経営権を任せて村営企業から村有企業に転換して以降は、企業自身の資本蓄積を奨励している以上、企業自身及び幹部の出資という形の内部留保も認めざるをえない。一方で、赤字企業については請負幹部の経営責任の追求も行われている。だが村の出資への配当と請負料に外に、税金、さらには優良な土地の使用についての地代徴取も検討されてよい。というのは山村の房幹村ではこれ以上の工場敷地が確保できないために、隣村から農地を購入している。この購入した土地の代金を村が負担しているが、立地させたセメント工場にも負担させるべきだという考え方もありうるのである。なおこの購入した農地は、房幹村では所有権の購入(村境の移動・拡大)と理解しているが、上級機関の莱蕪市土地管理局は永久使用権の購入だと説明する。この違いの意義についてはさらに検討が必要であろう。
研究成果の発表
1999年12月 月刊雑誌『農村統計』ないし早大『政治経済学雑誌』を予定。予定題目「中国・土地制度の実際とその問題点」