表題番号:1997A-242 日付:2002/02/25
研究課題粘性的双曲型保存則の方程式の非線型波の安定性(Ⅱ)
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 西原 健二
研究成果概要
今年度の研究では、一次元粘性流の方程式系であるviscous p-systemに対する初期境界値問題の解の希薄波への漸近に関する成果を得た。右半空間において、右遠方の速度u+が、左側境界上における速度u-より大なるとき、対応するRiemannの問題の考察から、右方に進む希薄波(2-rarefaction wave)に漸近することが予想され、実際、それを証明した。
 まず、u+-u-が小さく初期擾乱も小さいとき、希薄波の安定性を示した。証明は、通常の方法で、線型化された方程式に対するエネルギー法による。希薄波は、滑らかでないので、滑らかな近似を構成する必要があるが、作り方から、perturbationの境界値が零とすることが出来、Cauchy問題とほとんど同様の評価が可能となる。
 更に、u+-u-の大きさに制限がなく、任意に与えられた初期擾乱に対しても、初期境界値問題の解が希薄波に漸近することが示された。これは、任意のデータに対する結果で、このような非線型の問題では最良といえるであろう。このときも希薄波の滑らかな近似を構成する必要があるが、上記と同じように作ることができない。従って、エネルギー評価をするとき境界からの未知の値が出て、ひとつひとつ丁寧に評価しなければならない。また、流体の比体積vが零にならないことを示すことも重要で、かなり注意深い評価を必要とする。また、ここでの方法はCauchy問題にも適用できて、松村―西原の結果(Commun. Math.Phys. 144(1992))も改良した。
 これらの結果は、下記2つの論文に収められ、投稿中である。
研究成果の発表
T. Pan, H. Liu and K. Nishihara, Asymptotic stability of the rarefaction wave of a one-dimensional model system for compressible viscous gas with boundary, to appear in Jpn J. Ind. Appl. Math.
A. Matsumura and K. Nishihara, Global asymptotics toward the rarefaction wave for solutions of viscous p-system with boundary effect, to appear in Quart. Appl. Math.