表題番号:1997A-240 日付:2003/11/06
研究課題ホッブズにおける機械論的自然像と近代政治哲学の成立
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 佐藤 正志
研究成果概要
本特定課題研究助成に基づく研究は、トマス・ホッブズの政治哲学を、アリストテレス―スコラ的伝統から近代的な学問理念に立脚した政治学への転換という視点から明らかにしようとするホッブズ研究の一部をなす。1996年度からの特定課題研究助成に基づく研究では、とくに、1990年代になって顕著となった新たなホッブズ研究(とりわけ重要であるのは、書簡集の刊行や初期草稿の編纂などによる新たな一次資料の提供、「新たな歴史的方法」と呼ばれる思想史研究による成果、フランス語版ホッブズ著作集の刊行とそれにともなうより広い思想史的文脈の解明など)に照らして、そうした視座に基づいて進めてきた研究を再検討し、さらに発展させることを目指してきた。こうしたホッブズ研究は、ホッブズの政治哲学を近代の自然科学を範としたかれの哲学体系の中に位置づけることによって、その近代性の意味を明らかにしようとすることに特色がある。この目的を達成するために、1997年度の特定課題研究助成に基づく研究では、近年の人文主義との関わりで提起されている近代哲学・科学の形成過程についての新たなる知見を背景としてホッブズの哲学体系の形成の文脈を再検討すると同時に、そうしたホッブズ哲学体系と政治哲学との関係を、上記の最近の新しいホッブズ研究の諸成果をもとに、同時代の政治的言語の変容の文脈のなかで再検討することを目指した。そうした研究によって、ホッブズにおける人文主義的伝統にもとづく政治哲学から、近代科学にもとづく政治哲学への転換の思想史的文脈を解明すると同時に、そのホッブズの政治哲学の近代性の意味を明らかにしようとした。研究成果は、佐藤正志・添谷育志編『政治的概念とその文脈―近代イギリス政治思想史研究―』(早稲田大学出版部、1999年)および同書に所収の論文「社会契約」で明らかにするほか、『ホッブズの政治哲学―機械論的自然像と近代国家―』(早稲田大学出版部刊行予定)にまとめる予定である。