表題番号:1997A-224 日付:2002/02/25
研究課題デファクト・スタンダードと企業利益に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) アジア太平洋研究センター 教授 山田 英夫
研究成果概要
競争戦略の視点から見たデファクト・スタンダードの研究においては、これまでマーケットシェアを獲得することが事実上の目的とされてきた。従って、事業的に成功したか否かの測定単位として、シェアの大小が用いられてきた。かつては、PIMS研究に代表されるように、シェアをとることが利益に結びつくという前提があったからである。
 しかしながら、昨今のオープン化の流れの中で、デファクトを獲っても利益が上がらない事例が増えてきた。それは、オープン化の中でデファクトを獲るためには、①有力企業間でコンソーシアムを組んで規格を決めるケースが増え、②ファミリー作りのため、高い特許料は要求できず、③早期のシェア獲得のため、ペネトレーション価格が求められてきたからである。
 本研究は、こうしたオープン環境下でデファクト・スタンダードにからめて企業が利益を上げるためには、「本体―補完製品」という利益源の多元化と、「現在―将来」という利益収穫の時間軸の多元化の2つが必要であることを明らかにした。
 すなわち、デファクトにからめて利益を上げるためには、次の4つの方法があることを示した。
①「本体で現在」利益を上げる
 :機能向上と価格低下を同時に競合企業よりも早く進める
②「補完製品で現在」利益を上げる
 :本体は安く提供しても、本体の機能実現のために必ず使わなくてはならない補完製品で利益を上げる
③「本体で将来」利益を上げる
 :本体が機能的に陳腐化してきた時に、バージョンアップ、更新等で利益を上げる
④「補完製品で将来」利益を上げる
 :本体を長く使い続けるために必須な標準化されていない補完製品で利益を上げる
 こうした4つの方法をビジネス・システムの中に組み込んだ上で、デファクト・スタンダードを獲得する競争を行って行くべきである。
研究成果の発表
1997.7 山田英夫『デファクト・スタンダード』日本経済新聞社
1998.3 山田英夫「デファクト・スタンダードの類型化と利益構造」『早稲田大学システム科学研究所紀要』No.29.