表題番号:1997A-215 日付:2005/02/19
研究課題TESOLの分野における「語彙」の習得及び指導に関するアプローチ
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 高山 正弘
研究成果概要
本研究の目的は英語を外国語として学ぶ教育環境における語彙の習得及び指導においてどのようなアプローチが適切であるか、また、語彙不足に対処するためのストラテジーとしてはどのようなことが考えられるかをこれまでの研究をもとに概観的に考察することにある。第1章では語彙習得のプロセスを扱う。まず、語彙を学ぶということはどういうことかを総体的な視野でとらえ、簡潔に段階を追って、短期記憶がどのように刺激され、ねらいとする語彙がどのように長期記憶に入り将来の活用として蓄えられるかをみる。第2章は語彙指導のアプローチに視点を置く。ここでは主に2つの基本的な語彙指導におけるスタンス、つまりimplicitな方法とexplicitな方法に焦点をあて、それぞれにおいていかなる具体的な語彙指導の方法があるかを明らかにする。第3章は学習者の経験する語彙不足を処理するためのストラテジーに言及するが、たんに語彙の意味を理解するためだけの方法論にとどまらず、語彙の活用面にも視点を向ける。第4章では語彙習得理論において、まだよくわかっていない部分にどのようなことがあるかをさぐり、また最近の動向であるコロケーションなどの活用にみられる、いわゆるlexical approachに触れる。第5章では教室での教育的視点から様々なアプローチにおいてどれが妥当であるか考察し、その意味合いをさぐる。次に、本研究を通じていくつか明らかになったことの一つに簡潔に触れておく。それは、語彙の研究においてよく見られる、未知語の理解に「文脈」の活用が有効というのがあるが、これは文脈からの類推は未知語の意味をおよそ理解する助けになることもあり得る(そうでないという研究もある)というだけのことであって、それが必ずしも語彙習得には結びつかないということである。語彙習得には学習者の集中力の問題や単語と意味の結びつきをどの程度詳細に把握しているかという面も考慮されねばならない。理解の過程を習得にまで移行させるには学習者の認知的側面をさまざまな学習活動を通して刺激することが大事であり、この部分の細目は次回の研究対象としたい。