表題番号:1997A-206 日付:2002/02/25
研究課題能動触による弾性体の触知覚
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 助手 三嶋 博之
研究成果概要
[手続き]
 つり下げられた弾性体(ひも。ケプラー製)の長さの知覚とその際に行われる能動的な探索運動との関係を明らかにするために以下の実験を行った。
 金属製の支柱からつり下げられた4種類の長さのひも(0.6 m、0.8 m、1.0m、1.2m)を、その下端を手で持ち下方に引いてひもを振動させることで非視覚的に被験者(8名)にひもの長さを特定させた。ひもの上端には張力センサーを取り付け、ひもに力を加えられた時間を測定した。それらのデータをA/D変換器経由でコンピュータに取り込み、「ひも-手」系のダイナミクスを解析、特定した。
[結果]
 分析の結果、手で引かれた後に減衰するひものダイナミクスは以下の式で表されると考えられる。
  It = a log e X + b (1)
 (Itはひもを引く個々の動作の間隔、Xはひもの長さ、aとbは定数)
 8名のうち5名の被験者で、ひものダイナミクスに同調した運動(式(1)に良く当てはまる運動)を行った。つまり、短いひもでは短い時間間隔でひもに打撃を加え、長いひもでは短いひもよりも長い減衰までの時間を待って次の打撃を与えており、それがlogの関係にあった。また、これらの5名の被験者は、ひもの長さ(ひも上端の固定点までの距離)の知覚における成績もすぐれていた。一方、ひものダイナミクスに同調した運動を行わなかった3人の被験者では、ひもの長さの知覚における成績が他の5人と比較して良くなかった。
[まとめ]
 (i)
対象を知覚するための探索運動は、対象のダイナミクス(より正確に言えば、対象とそれに対して運動を仕掛ける知覚者の身体の構成するシステムのダイナミクス)によって制約されており、知覚者の探索運動は実際にそのダイナミクスに同調することができる
 (ii)
対象(と身体)のダイナミクスに対して探索運動が同調できなければ、対象の知覚が困難である。
研究成果の発表(予定も含む)
三嶋博之。 (Sep. 17、 1997). 能動的触活動によるひもの長さの知覚(2)。
ポスター発表、 日本心理学会第61回大会、 関西学院大学。