表題番号:1997A-188 日付:2002/02/25
研究課題龍船競漕伝承組織の日台比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 寒川 恒夫
研究成果概要
本研究は沖縄県糸満市字糸満と台湾台北市関渡媽祖宮とにおこなわれる龍船競漕をとりあげ、行事を支える社会組織について比較することを目的としている。
 字糸満と関渡媽祖宮の龍船競漕は共に古くからおこなわれる旧暦端午の年中行事で、これまでの研究から、南中国より伝播したことが明らかにされている。
 字糸満の場合、今日、行事は「糸満ハーレー行事委員会」によって運営される。委員会は字糸満を構成する9区から、それぞれ複数の代表者が出て編成し、これを、糸満市役所、糸満警察署、糸満消防署、南部病院、糸満漁業協同組合、糸満商工会、第11管区海上保安本部が支援する体制をとっている。他方、競漕は3艘対抗でおこなうのが伝統で、字糸満を構成する西村、中村、新島の3地域(3地域は明治41年に合併して字糸満の前身たる糸満町を成す)がこれを担当する。3地域の共同行事として始まった競漕は、糸満町が糸満市に字として組み込まれるにおよび、市役所、警察署、海上保安部などより上位の行政組織の参画・協力をとりつけて運営されている。父系親族集団である門中(祖先祭祀に関わって機能する)は字糸満に40余を数えるが、これらは競漕行事には関わらない。
 台北市関渡媽祖宮の場合、媽祖宮の祭祀組織である「社」が龍船会を組織し、運営にあたっている。社の経済はこれに属する丁(男子成員)と口(女子成員)が供出する縁銭によってまかなわれる。台北では毎年、台北市など行政主導の龍船競漕国際・国内大会が催されるが、媽祖宮ではなお伝統的な社がその担い手になっている。
 字糸満と媽祖宮の競漕組織は、前者が行政的組織、後者が祭祀組織によって担われるという差が抽出される。