表題番号:1997A-186 日付:2002/02/25
研究課題競争場面と非競争場面での援助行動
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 青柳 肇
研究成果概要
本研究では、仮想葛藤場面での競争文脈における援助行動を検討した。大学生211名を対象に4つの独立変数を変化させた24のシナリオの質問紙を実施した。心理学的変数の内容は、「時間的余裕(あり、なし)」「援助者との関係(親友、友人、喧嘩相手)」「被援助者の努力(あり、なし)」「グループ(内、外)」である。「時間的余裕(あり、なし)」で2群に分け(Between Subjects)、被験者には、各群で分類された12種類の記述文に反応させた(Within Subject)。従属変数は、「行動(援助する、しない)」「哀れみ(あり、なし)」「怒り(あり、なし)」「怒り(あり、なし)」「責任性(あり、なし)」である。結果は、以下の通りである。援助行動は、「哀れみ」「怒り」と関係し、哀れんでいるほど、また怒りが少ないほど生じる。また、「怒り」と「責任性の低さ」に弱い関連が見られた。責任性の判断に「怒り」感情が影響を与えることが示唆された。シナリオにより、援助傾向に相違が見られるか検討するため、シナリオ間で対応のある分散分析を行った。シナリオの主効果は4つの従属変数に見られた。時間の余裕間にも主効果が見られた。全てのシナリオにおいて「時間的余裕あり」群は、「なし群」より「行動」「哀れみ」が高く、「責任性」と「怒り」が低かった。従って、援助者の「忙しさ」は、援助行動を低減する要因であった。また、相手が内グループか外グループかの関係では、援助行動に差は見られなかった。また、被援助者との関係では、関係が親密であるほど援助行動や哀れみ感情が生まれやすい。他方、疎遠であるほど怒りが出現しやすいことが示された。自己責任性では、努力の程度が強く関わった。