表題番号:1997A-183 日付:2002/02/25
研究課題持続可能な発展の指標の理論分析と計測可能性に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 助教授 赤尾 健一
研究成果概要
本年度は、持続可能な発展を評価するための指標に関する理論的検討とその計測に必要な基本的なデータの所在、そして提案されている指標について調査・研究した。持続可能性の条件、そしてそれに密接に関連するグリーンGDPの定式化は、Hartwick(1977, AER 66)やWeitzman(1976, QJE 90)という古典的記念碑的研究をベースに90年代にはいって爆発的に研究されている。これらの研究の発展(技術進歩や開放経済のモデル等)を踏まえて、本研究では、これまで行われなかった離散時間モデルでこれらを定式化した。このこと自身はさほど意味はないが、それによって、これらをより広い条件の下で導出できることが示される。特に、従来、経済が最適経路上を運行しているという(環境問題の存在を考えればかなり大胆な)仮定に基づいて議論が行われてきているが、持続可能性の条件はこの仮定を必要としないことを明らかにした。一方、グリーンGDPの定式化は、最適成長で要求される横断性の条件よりも弱い条件の下で得られる(これはMitra and Dasgupta, 1997の得た結果を離散時間モデルで確認するものである)ものの、ハミルトニアンの最大化は必要であり、環境財を含んだ動学的一般均衡経路上に社会があると想定する必要がある。この意味で、グリーンGDPは、一般に考えられているほど、また経済理論家が熱心に論じているにもかかわらず、さほど意義のあるものではないかもしれない。基本的なデータの所在については、既存の日本の統計から収集しており、現在、データ間の整合性や調整を検討している。これまでに提案されている指標としては、国連による持続可能性指標のマニュアルを中心に資料を収集している。なお、現在調べた範囲では、World Bankによる持続可能性の計測が、経済理論に沿った持続可能性の概念に最も近い作業である。