表題番号:1997A-180 日付:2002/02/25
研究課題二面角空間でのタンパク質の分子動力学シミュレーション
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 輪湖 博
研究成果概要
タンパク質の立体構造をその立体構造エネルギーという観点から解析し、研究するために、これまで、エネルギーの最小化、基準振動解析、モンテカルロ・シミュレーションを二面角を変数として実行するプログラムFEDERの開発を行ってきた。しかし、二面角を変数とする分子動力学計算に関しては、変数の3乗に比例する計算量が必要と考えられ、実用的でなかったため、プログラムの開発を見送ってきた経緯がある。しかし、近年、変数の1乗に比例する計算量で可能なアルゴリズムが相次いで発表されたことを受けて、われわれのプログラムFEDERにもその機能を付加し、分子動力学シミュレーションを行ってみることとした。
 結果的に2つのアルゴリズムを試すこととなった。最初に採用したJainらのアルゴリズムは、シミュレーションを続けるうちに運動量が変動し、計算が不安定になる欠点があることがわかった。そこで新たにMazurらのアルゴリズムを採用したプログラムを開発した。こちらは、運動量保存がアルゴリズム的に保証されており、現在までに行ったテストの結果では、少なくとも通常の環境設定でのシミュレーションはJainらのものより安定に進行することがわかった。しかし、非常にエネルギーが高い初期値、非常な高温、非常に大きな系でのシミュレーションにはついてはまだ十分に検討しておらず、改良が必要となる可能性もある。また、並行して、最小エネルギー構造のまわりでの基準振動モードにそったゆらぎのシミュレーションについてもテスト計算を行った。
 今後、プログラムの改良とともに、具体的なタンパク質を設定してシミュレーションを行う予定である。