表題番号:1997A-178 日付:2002/02/25
研究課題「功利主義」思想形成に及ぼした「救貧法」の意義
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 東條 隆進
研究成果概要
「功利主義」思想形成に及ぼした「救貧法」の意義
 もともと「救貧法」というものが成立するようになったのは凶作による穀物騰貴と飢餓、南米の貴金属流入による価格革命、土地囲い込みによる無産階級の大量創出に対応するために16世紀末に法律化されたものであった。教区自主権の確立の結果生まれた定住法が救貧法による貧民救済の使命を増した。その上、産業革命期の1795年制定のスピーナムランド・システムの採用、アローワンス・システムが救貧法問題を深刻にした。そして救貧法にかわる貧民救済のシステムが「市場」であった。救貧法にかわる市場による問題解決を可能にするための思想が「功利主義」であった。ベンサムのパノブティコン(円型監獄)による貧民救済計画である。貧民が自分の労働で飢餓の状態から這い出すということである。貧民を価値を作り出す労働力に作り変えるということが課題であった。
 アダム・スミスは分業にそれを求め、リカードは労働力市場の発達にそれを求めた。(リカード経済学における〈救貧法〉の意義、1995、早稲田社会科学研究)
 さらに国際関係における国家間の分業によって効率的な労働力と生産における生産性を高めようとした。国際分業関係による国際的貧困を解決しようとしたことから国際通商を発達させようとし、国際通商を国際金本位制によって発達させようとした。国際市場の発達による国際分業の発達ということが重要な意味を持った。
 このような問題意識から論文のテーマを「貨幣思想から見た金本位制」(1998年、早稲田社会科学研究)として発表した。しかしこのような金本位制も国際分業を高めるのでなく、国際競争を激化させ、経済を不安定にしたというのが、研究結果である。
研究成果の発表
1998.3.30 「貨幣思想から見た金本位制」早稲田社会科学研究