表題番号:1997A-177 日付:2002/02/25
研究課題「柔軟な専門化」論から「市場の社会的構築」論へ-浅間テクノポリス圏における坂城テクノセンターの役割を手掛かりに-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 上沼 正明
研究成果概要
成績評価や入試等の仕事が一段落するのを待って三月中旬の一週間、まだ雪の降る菅平セミナーハウスを拠点に、坂城町での調査に赴いた。以前は上田から国道18号線バイパスで一時間弱を要したが、長野道の開通に伴い僅か10分足らずで坂城ICに着き、アクセスの向上(近々、鉄道の新駅も開設予定)に驚く。もう一つ大きな違いがあった。何のツテもなく訪れた前回と異なり今回は某研究会を通して得た紹介者のお陰で、町の担当者は無論のこと、2~300人の従業員を擁する優良企業から難加工を得意とする10人程の異色企業や夫婦だけの工場まで訪れる幸運に恵まれて工場見学と面接調査を実施し、(財)さかきテクノセンターでも貴重な話や情報を得る事が出来た点である。
 特に、工友会の逸話やスピンオフの別な側面を当時の体験者本人から聞けた事、地元企業人がかつての「坂城詣で」を迷惑な思い出として語った事、この町の企業間関係が30%程の取引関係で「依存と自立」の微妙なバランスを維持している事、不況でも人を減らさず、退出と同じ位の参入もあって企業数も殆ど不変な事、などが印象深く、バブル崩壊によって大きな転換期を迎えているという論調とは異なる観察を得た。依然としてこの北国街道の地には歴史風土に培われた一匹狼的文化が、若い人々には兎も角も、持続しているのであろう。
 坂城町を一拠点とする浅間テクノポリス圏域構想も、長野県の医療、福祉、教育・研究、工業、自然等の資源を異業種交流によって新結合して高齢社会での新しい内需と生活の質に先進的に応える「組織原理の発見」を託そうとする調査者の思惑からは遠く、国と県の予算に地元の整備案件をどう乗せていくかという行政間の話のレベルであるかに思えて、ここでも住民や地元企業とのコミュニケーションの難しさを知った。その点で、長野パラリンピックで話題になった障害者用雪上車の共同開発を「さかきテクノセンター」での研究会が行った意義と可能性をもっと評価していくべきであろうと考えた。