表題番号:1997A-169 日付:2002/02/25
研究課題プラズマ及びシースを含む系での非線形現象の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 松永 康
研究成果概要
熱電子陰極を用いたプラズマの電流電圧特性はヒステリシスを描き、低周期倍化現象、カオス的振動現象が観測される。駆動系の振動のモデルとして、弱電離状態での非線形ポテンシャル中のイオンの運動に注目して数値解析を行い、パラメータ励振とポテンシャルの非対称性が原因で、カオス的振動が起こることを説明した。更に、放電特性の解析を行い、エネルギー変化と密度変化を結合させる多重定常状態モデルを提案した。
 上述の理論的研究によりプラズマ周辺の物理量を更に詳しく考察する必要性が生じ、より近似を上げるため自己無撞着な計算手法が要求された。そこで、弱電離プラズマに有用な新しいカイネティック・シミュレーション技法であるCS(Convective Scheme)法を、カオス的振動現象に適用し、スキーム自体を検討しつつ、振動現象を再考することにした。以前の研究では一つのイオンの運動に注目して解析を進めたが、CS法を用いることによって系外へ流れ出るイオン電流をカイネティックステージで自己無撞着にシミュレートすることが可能となる。プラズマ中の電子はボルツマン分布とし、イオンの運動をCS法を用いポアッソンの式とカイネティック方程式を連立させ、差分近似法を用い各時間ステップごとに解いた。まず、定常解が下に凸型の電位分布と上に凸型の電位分布に落ちつくことを確認した。これは実験でも観測され、我々の理論でも裏付けされている電位分布である。次に陰極の電位等のパラメータを変化させることにより、下に凸型の電位分布での振動電流を得た。このモードの振動数と波数を議論した結果、イオン音波と系内のイオンの往復運動が関与する低周波が観測されていることがわかった。
 このようにCS法によってイオン波の基礎的な振動モードをシミュレートする事に成功した。更にこの低周波振動は散逸を導入すると強調されることがわかったので、現在この線スペクトルの発生機構とモードの結合を集中的に議論している。