表題番号:1997A-145 日付:2004/11/17
研究課題超曲面の収縮問題の偏微分方程式によるアプローチに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 穴田 浩一
研究成果概要
超曲面の収縮問題とは、ある与えられたn次元超曲面(以下、超曲面)がその曲率に依存した速度をもって収縮運動を行うときのその超曲面の振る舞いを考える問題である。例えば、結晶成長などの界面の動きなどを数学的に記述した際に現れてくるもので、この問題はそれらを数学的に一般化した形で扱っている。
 本研究の目的な、この超曲面の収縮問題を微分方程式を用いたアプローチで解析を行うことである。このような問題を微分方程式を用いて解析を行う利点の一つとして、収縮する超曲面の初期の状態に対して適当な条件を与えたときの振る舞いなどを理論的に調べるために便利であるということが考えられる。さらにもう一つの利点として、数値実験を行うことにより具体的な形状を調べたりすることが比較的容易である、という点が上げられる。
 本研究で具体的に対象としたものは、与えられた超曲面がその調和平均曲率のα乗(0<α<1)に依存した速度をもって収縮したときに、その形状を変化させずに相似形のまま収縮する超曲面(以下、自己相似超曲面)にはどのようなものが存在するか、という問題である。自己相似超曲面は、その他の振る舞いを調べる上でも非常に重要な役割をするものである。この問題に対して、超曲面は超球(n=2の場合は単に“球”)は自己相似超曲面であることは容易に分かる。また、α=1の場合には凸な自己相似超曲面は超球以外にない、ということがすでに知られている。したがって、ここで問題となるのは0<α<1の場合に超球以外に自己相似超曲面は存在するか、ということになる。これに対して、n=2の場合、あるαに対して球以外に自己相似曲面が存在するという結果を証明することが出来た。また、さらに数値実験によりその具体的な形状をいくつか与えている。
 この成果は、International Conference of P.D.E(1997年8月於ウクライナ・キエフ大学)応用数学合同研究集会(1997年12月於龍谷大学)日本数学会(1998年3月於名城大学)でそれぞれ発表を行い、まとめた論文を投稿する予定である。