表題番号:1997A-139 日付:2002/02/25
研究課題 Si高分子の電子構造の理論研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 武田 京三郎
研究成果概要
ハロゲン化ポリシランの電子構造
 フッ素、塩素、臭素、ヨウ素(F,Cl,Br,I)等のハロゲン元素は3対の孤立電子対を有し、電子受容性が高い。これらを側鎖基として配位させたポリシランの電子構造を第一原理計算により明らかにした。その結果、ハロゲン元素の孤立電子対は、ポリシランの主鎖骨格に広がったシグマ電子と軌道混成することにより、バンドギャップ内に側鎖ハロゲン原子に局在した準位を形成する可能性が理論的に明らかとなった。しかもこの状態はハロゲン元素の高い電子受容性のため電子非占有状態であり、アクセプター準位としての機能を有する。ところがそのエネルギー位置は価電子帯上端より1eV以上高い位置にあり、熱アクセプターとしての可能性は低いことも明らかとなった。この局在軌道は主鎖―側鎖相互作用から形成され、しかも電子非占有性であることから、価電子帯からの光励起が可能となるため、ポリシラン類のバンドギャップの実効的な狭小化となる。こうしてハロゲン元素の置換様式や種類を変えることにより、基礎吸収端を人為的に可変する可能性が理論的に示唆された。
非結合型孤立電子対を有する側鎖基の電子論
 ポリシラン高分子の側鎖基による自己ドープ化の第一段階として、非結合孤立電子対(non-bonding lone pair, NBLP)を有する側鎖基、ピロール(Pyr)およびチオフェン(Thi)を置換したポリシランの電子構造を考察した。その結果、NBLPは主鎖のシグマ電子と相互作用することにより、バンドギャップ内に電子占有局在準位を形成することが明らかとなった。この準位の電子占有性はPyrのNおよびThiのS原子のNBLPの電子供与性による。さらに置換基を回転することによりこの局在準位のエネルギー分散が大きく変化し、特にピロール置換型ポリシランではバンドギャップが非常に狭小化する事が理論予測された。
研究成果の発表
1998 ピロールポリシランの電子構造 日本物理学会 1998秋予定
1998 Electronic Structure of Pyr PSi & Thi PSi Syn. Met. 98 161(1999)