表題番号:1997A-137 日付:2002/02/25
研究課題鋼製橋脚の耐震性の評価と耐震補強に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 依田 照彦
研究成果概要
1995年1月に発生した兵庫県南部地震は、鋼製橋脚に多くの損傷をもたらした。鋼製橋脚の被害は、塗装が剥がれた程度のものから崩壊したものまで多種多様であった。このときを境に局部座屈を考慮した鋼製橋脚の耐震性の検討の気運が高まったことは事実である。以後諸機関において鋼製橋脚を対象とした静的および準静的繰り返し載荷実験が精力的に行われ、現在、鋼製橋脚の繰り返し挙動が明らかになりつつある。しかしながら、実験結果のみで実際の鋼製橋脚の耐震性を評価することは、入力地震動・復元力特性などに関するパラメータの多さから判断して限界があると思われる。そこで、鋼製橋脚の耐震設計の中に、従来の震度法・保有水平耐力法による耐震設計に加えて、動的解析による耐震設計が追加された。
 動的解析そのものは十分熟知された手法であるが、地震時の鋼製橋脚の動的弾塑性繰り返し挙動を解析的に調べることは、有限要素性の汎用プルグラムを用いたとしても必ずしも容易ではない。したがって、本研究では簡易な動的非線形解析法について検討し、それを用いた耐震性の評価方法を提案することを目的とした。
 本研究ではコンクリートを充填しない鋼製橋脚を対象とし、地震時の挙動が1自由度のバネー質点系で表現できる鋼製橋脚を仮定した。この前提条件における1次元バネ―質点系モデルの動的応答解析では、荷重―変位履歴曲線の仮定と1質点系の質量の仮定が結果を左右する。そこで、バネ定数すなわち荷重―変位曲線の勾配を決定するために、鋼製橋脚の静的あるいは準静的繰り返し載荷実験の結果を利用することとした。この繰り返し載荷実験の中には鋼板の局部座屈と鋼製橋脚のP―Δ効果の影響が含まれているので、1次元の荷重―変位関係においても、剛性の低下と強度の劣化の影響を陰に1質点系モデルに含めることができる。この剛性低下と強度の劣化を考慮した復元力モデルの構築が、動的解析の結果を左右することになる。
 耐震性評価の指標としては、非線形動的応答解析による最大変位と残留変位が適切であり、1質点系の復元力モデルを用いたとしても荷重―変位履歴構成則モデルを非対称とすることにより精度よく耐震性の評価ができることが確かめられたので、耐震補強を必要とする箇所を特定することが簡易非線形動的応答解析を用いても可能であるとの結論が得られた。