表題番号:1997A-131 日付:2002/02/25
研究課題高減衰構造モデルの動特性推定に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 曽田 五月也
研究成果概要
はじめに、ダンパーなどにより特には高減衰化されていない建物の固有の減衰性能を評価するために小型の鋼製フレームによる実験を行った。フレームを構成する柱梁接合部の接合法の違いに関しては高力ボルト摩擦接合による場合が溶接接合による場合より約2倍の減衰定数になること、何れの接合方法によっても塑性変形(損傷)を経験した直後は減衰性能が高くなるが、十分な時間の経過後には元の性能にほぼ復することを確認した(成果資料1)。一般の鋼構造建築物ではその減衰定数が1%前後と低いため、特に超高層建築物のように風の影響を受けやすい建物では揺れによる不快感を引起こす可能性があることを、実際の超高層オフィスビルの風揺れ観測などから確認し、それを防止するには粘弾性ダンパーの応用による建築物の高減衰化が有効であることを明らかにした(成果資料2)建築物の総合的な耐震安全性を確保するためには構造本体の保全のみならずその収容物、付帯物の保全、あるいはそれらの移動%転倒%落下による2次被害の防止も必要である。そのためには、建築物の変形・加速度の両者を同時に抑制する構造システムが望ましく、免震構法採用の次善の策として粘弾性ダンパーの活用が有効なことを明らかにした。粘弾性ダンパーによる建築構造の高減衰化は、大地震に対しても弾性設計を可能にすること、また弾塑性建物では予測が難しい複雑な地震動の作用に対しても特定層への変形集中を防止し、応答予測を比較的容易、正確に行えることは今後の性能規定形の設計法に向けて大きな利点となるであろう。粘弾性材料はさらに高性能なものが開発されつつあり、本論で示した結果よりもさらに良い結果が期待できるようになると考えられる(成果資料3)。
研究成果
1) 1998年9月、 加振実験による鋼製模型建物の減衰特性の検討(その1$2)、日本建築学会秋季学術講演会
2) 1998年4月、鋼構造超高層建築物の風入力に対する居住性確保への粘弾性ダンパーの応用、日本鋼材クラブ奨励研究研究梗概集
3) 1998年9月、 粘弾性ダンパーの建築構造物への設置容量の決めかたについて(その1、2)、日本建築学会秋季学術講演会