表題番号:1997A-123 日付:2002/02/25
研究課題二環性大環状五座配位子が配位したコバルト(III)錯体の合成とキャラクタリゼーション
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 石原 浩二
研究成果概要
サイクラムに酸素原子を含むブリッジを導入した二環性の大環状五座配位子 [9]aneN4O (17-オキサ-1,5,8,12-テトラアザ[10.5.2]ビシクロノナデカン)と、そのコバルト錯体 CoIII[9]aneN4Oを合成し、この錯体の溶存状態と反応性を明らかにした。
 この錯体の紫外可視吸収スペクトルは、水溶液の酸性度を変えると変化する。吸収スペクトルの酸濃度依存性を解析することにより、イオン強度 1M、25℃で、pKa = 1.27 という値を得た。この値は、Co(III)錯体に配位している水分子からのプロトン解離の値としては低すぎるため、恐らく配位しているエーテル酸素のプロトネーション/デプロトネーションによるものであると考えられる。
 一方、この錯体は酸性溶液中で塩化物イオンと反応し、クロロ錯体を生成する。分光光度法により反応を追跡した結果、この反応は二段階の逐次反応であることがわかった。また、一段目の反応は水素イオン濃度が高いほど反応が遅くなることもわかった。
 以上の結果とNMRの測定結果等から、一段目の反応は、錯体に配位している水分子が塩化物イオンによって置換される反応であり、二段目の反応は、配位エーテル酸素が塩化物イオンにより置き換わる反応であると考えられる。また、一段目の反応の水素イオン濃度依存性は、配位エーテル酸素にプロトンが付加することにより、エーテル酸素によるトランス効果が小さくなるためであると考えることができる。一段目の反応を速度論的に詳しく解析したところ、この考えを支持する結果が得られた。