表題番号:1997A-114 日付:2002/02/25
研究課題組織能力と組織デザイン
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 助教授 藤田 誠
研究成果概要
本年度は、上記研究課題のうち組織資源、組織能力と組織デザインの関連に注目し、文献サーベイの形式で理論的な概念枠組の整理を行った。その成果はすでに「経営資源と組織能力」(『早稲田商学』第375号(1997年12月)、39-68頁)という論文で発表済みである。その要約は以下のとおりである。
 経営資源もしくは組織能力が企業の競争優位確保の主要な源泉の1つとみなす理論・発想は、経営学の分野では決して目新しいものではない。じっさい、米国流の経営戦略論においては、“resource-based view”もしくは“competence-based view”として、近年の主要なパラダイムの1つとなっている。しかし従来の研究では、「経営資源」ならびに「組織能力」の概念定義自体が曖昧であり、論者によってまちまちな定義がされてきた。また少数の例外を除いて、経営資源ならびに組織能力を実際に測定した研究も少ない。かかる現状を踏まえて、本年度は昨年度に引き続き、文献レビューによる概念整理を行った。
 その要点の1つは、会計上の「資産」概念と「経営資源」概念とは、動態的・経済的な資産の概念規定によれば類似した概念となるが、現行制度会計上では貨幣額による測定・表示に馴染まないものは資産に含められないという点で区別すべきである、ということである。また、組織能力とは経営資源を開発、蓄積、活用する潜在力と定義でき、両概念も区別すべきであると考える。さらに先行研究を概観すると、組織能力と組織デザインとは、概念的にも測定レベルでも重複する部分があると考えられる。これは、従来指摘されなかった点であり、この点を手がかりに、経営資源ならびに組織能力を測定する道が開かれるものと考えている。