表題番号:1997A-112 日付:2004/11/02
研究課題わが国の会社判例における事実上の主宰者概念の法的位置づけ・機能とその 閉鎖会社法制・企業結合法制への展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 助教授 中村 信男
研究成果概要
本研究は、わが国の判例に登場した事実上の主宰者概念が法的にどのような機能を有するのか、とりわけ、会社の実質的支配者の責任が問題となる親子会社や閉鎖会社の局面で解釈論・立法論の両面においてどのような意義を有するのか、を検討することを目的とするものであるが、1997年度は、特に親子会社の局面に焦点を絞り、すでに会社の実質的支配者を影の取締役と捉えて、その行為規制や責任について明文の規定を置いているイギリス会社法との比較法的研究も踏まえ、関連する問題の分析・検討を試みた。その結果として、第1に、わが国の判例にいう事実上の主宰者もイギリス法の影の取締役も、一部の論者がいう「事実上の取締役」として捉えるべきでなく、これを取締役概念を深化ないし実質化したものと捉え、会社経営の担い手たる地位にある者として、これに開示規制も含めた相応の行為規制と経営指揮責任を課すべきであるとの考えに達した。第2に、こうした理解は、会社の実質的支配者の存在も踏まえたコーポレート・ガバナンス論を展開していくうえで有意義であろうし、わが国では立法的対応が遅れている親子会社ないし結合企業の問題の解釈論・立法論的検討をコーポレート・ガバナンスの視点からも行なうべきことを示唆する点でも極めて有用と思われる。第3に、現在、法務省の法制審議会商法部会は、次の会社法改正の課題の一つとして、結合企業ないし親子会社法制の整備を掲げているが、以上のような意味において、本研究の成果は、今後わが国で行なわれていくことになる結合企業・親子会社法制の整備に多少なりとも寄与することであろう。現段階では研究成果の公表にまでは至っていないが、近日中に数本の論文として発表する予定であり、閉鎖会社との関連については引き続き検討を行なおうと考えている。