表題番号:1997A-104 日付:2002/02/25
研究課題資産の証券化に伴う会計上の諸問題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 大塚 宗春
研究成果概要
資産の証券化に伴う会計上の中心的問題の一つは、いつ金融資産の認識を中止するかにある。これに関するアプローチには、リスク経済価値アプローチと財務構成要素アプローチがある。リスク経済価値アプローチは、金融資産に内在するリスクと経済価値が不可分なものとして捉え、この両者が第三者に移転したときに金融資産の認識を中止するという考え方である。財務構成要素アプローチは金融資産を構成する財務構成要素に分解し、これい対する支配が移転したときに当該財務構成要素の認識を中止するという考え方である。リスク経済価値アプローチは国際会計基準のE48「金融商品」や英国の財務報告基準5号「取引の本質の報告」のなかで展開されている。財務構成要素アプローチは米国の財務会計基準125号「金融資産の移転とサービシングおよび負債の消滅の会計」の中で採られている。両者の相違の一つにリスクの移転に対する処理がある。リスク経済価値アプローチでは経済価値とともにリスクの移転が資産の認識の中止の要件であるが、財務構成要素アプローチの場合、リスクの移転がなくても資産の認識は中止されうる。たとえば、金融資産をリコース付で売却した場合、リスク経済価値アプローチではリスクが移転していないとして金融資産の認識は中止できないが、財務構成要素アプローチの場合資産の認識を中止するとともにリコース債務を認識する。
 金融資産の証券化といった金融のイノベーションは金融資産の構成要素への分解を促進し、構成要素別の取引を可能とするようになると思われる。こうした実態を反映する会計としては財務構成要素アプローチが採られるべきと思われる。
研究成果の発表
1998年6月 早稲田大学 早稲田商学第377号「金融資産の認識の中止に関する一考察」