表題番号:1997A-102 日付:2002/02/25
研究課題『蜻蛉日記』・『和泉式部日記』を中心とする日記文学の史的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助手 松島 毅
研究成果概要
本研究の目標は、女流日記文学最初期の作品である『蜻蛉日記』・『和泉式部日記』を主な対象として、そのジャンルとしての発生、あるいは『蜻蛉日記』から『和泉式部日記』へと受けつがれていく女流日記文学の展開の様相を把握しようとすることにあった。研究を進めていく中で次第に明らかとなっていったのは、両作品の関係を明らかにするにあたっては、女流日記文学としての両作品のみならず、両作品の背後に横たわる物語文学との関わりを検討することの重要性であった。
 そこで、研究の次の段階として、『蜻蛉日記』・『和泉式部日記』各々と物語との関わりについての検討を行った。その一連の作業を通して、『蜻蛉日記』と、『和泉式部日記』の女流日記文学における位相の違いが明らかになってきた。両者は、片や藤原兼家と道綱母、片や敦道親王と和泉式部という、それぞれ一組の男女の関係を、女性の側に視点を据えて叙述される点で共通しているが、物語を「そらごと」として排しながら、その文体を確立するい至るまで物語の文体に頼らざるを得なかった『蜻蛉日記』に対し、『和泉式部日記』は、むしろ、積極的に物語化を図っている形跡が認められるこのことは、『和泉式部日記』の成立を考える上で重要であり、今後も考究を要する問題である。
研究成果の発表
1998年5月 『和泉式部日記』成立論―その叙述形態との関連から―(中古文学会春季大会における口頭発表)