表題番号:1997A-098 日付:2002/02/25
研究課題進歩主義教育運動における活動主義と教科主義の対立と統合
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助手 佐藤 隆之
研究成果概要
研究課題について考察をすすめるうえで、キルパトリックの「プロジェクト・メソッド」と、個別教授法として知られるウォッシュバーンの「ウィネトカ・プラン」とパーカーストの「ドルトン・プラン」を比較検討した。プロジェクト・メソッドは、カリキュラムの構成単位を学習者の目的的活動におく点において活動主義に立つ。一方、個別教授は、最低限習得されるべきことを教科の枠組みにおいて個別的に教授する点において、教科主義の側面が認められる。そのように対照的である両者を比較考察することにより、第一に、それらの理論的相違を明らかにした。第二に、実践への影響という観点から両者を比較した。実践への影響が強かったのは個別教授の方である。これは既存の教科の枠組みに即した教育には、個別教授による改革の導入がより容易であったことを示す。しかし、個別教授による改革においても、望まれる個性教育や協同性は、教科の区分に拘束されるがゆえに十分に達成されなかったキルパトリックのプロジェクト・メソッドは、その短所を修正する方途として実践に影響を与えた。
 教科の区分を前提とする個別教授が実践において優勢であったことは、プロジェクト・メソッドにおける活動主義の限界を示している。その一方で、プロジェクト・メソッドが個別教授の短所を修正する役割を果たしたことは、教科主義が優勢であった実践が、活動主義の視点から改善される必要性があったことを示している。そのような史的事実関係に関する考察の一部は、ドルトン・プランとプロジェクト・メソッドの影響関係に焦点をあてた、論文「キルパトリック教育思想における『協同』概念の再検討―個別教授批判をてがかりとして―」(『教育哲学研究』第76号、1997年)においてまとめた。
研究成果の発表
1997.10 佐藤隆之「キルパトリックの『活動カリキュラム』論再考」日本デューイ学会
1997.11 佐藤隆之「キルパトリック教育思想における『協同』概念の再検討―個別教授批判をてがかりとして―」『教育哲学研究』第76号
1998(印刷中) 佐藤隆之「W.H.キルパトリックの間接的教育の思想』『家庭教育研究』第3号