表題番号:1997A-090 日付:2003/11/14
研究課題英国女流作家におけるヒロイン像(十九世紀、特にヴィクトリア朝)~オースティン、ブロンテ姉妹、ギャスケル、エリオット
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助教授 木村 晶子
研究成果概要
1997年度は、研究課題に掲げた英国女流作家のうち、特に、エリザベス・ギャスケルとブロンテ姉妹に絞って研究を進めた。ギャスケルに関して、以前より長編小説についてそれぞれ考察してきたが、今年度は、中編と短編を取上げ、中でも、超現実的な魔女の力を扱った作品に光を当て、社会問題や女性問題等、現実に即したリアリズムの長編との対比を考えた。現在、仕上っている論文としては、「魔女の棲む空間―The Poor ClareとLois the Witch」と題して、魔女の呪いと母娘の愛を主題とした前者の作品と17世紀末のニューイングランドのセイレム魔女裁判を扱った後者の作品を比較、検討しながら、ギャスケルの文学における魔女という存在の意味と、魔女のあらわす女性像の深層を探ったものがあげられる。魔女や魔術の研究書は、非常に多く、高価なものが多いため、資料費を活用させていただいた。ブロンテ姉妹に関しては、これまで姉のシャーロットを中心にして研究してきたが、最後の長編、Villetteにおける語りの問題を取上げ、独特なヒロイン像と一人称小説としての特殊性を考え、「ルーシー・スノウの物語の空間――C.ブロンテのヒロインの語りの到達点」を『学術研究』第46号に発表した。また、日本ブロンテ協会の公開講座講演として、「ブロンテ姉妹の作品における鏡の中の女性像」と題し、三姉妹の主な長編を全部取上げながら、それぞれの鏡の場面を考察し、女性像や作品の構造の違いを論じた。改めて修正し、まとめなおして論文として発表する予定である。英国で、資料を収集できたことは大きな助けとなった。今後は、ギャスケルのゴシック的要素の強い作品の研究、ブロンテ姉妹の作品におけるゴシックの影響の研究、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』の研究、ギャスケルとジョージ・エリオットとの比較研究等に広げてゆく予定である。
研究成果の発表
98.3 早稲田大学教育学部『学術研究』46号「ルーシー・スノウの物語の空間――C.ブロンテのヒロインの語りの到達点」
98.4 日本ブロンテ協会公開講座講演「ブロンテ姉妹の作品における鏡の中の女性像」
98.10 日本ギャスケル協会『ギャスケル論集』第8号「魔女の棲む空間――The Poor ClareとLois the Witch