表題番号:1997A-054 日付:2002/02/25
研究課題心学道話書による近世常用漢字の調査と研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 高梨 信博
研究成果概要
心学道話書は、江戸時代に庶民教化のためにおこなわれた心学道話を記録したものである。心学道話が平易なことばを旨としたのと同様に、その文字化にあたっても、当時の常用の漢字使用の範囲を大きく逸脱するような文字使用は避けられていたものと考えられる。本研究では、このような立場から、近世における常用の漢字使用を明らかにする一調査として、心学道話書から『鳩翁道話』をとりあげ、そこに含まれる漢字の全数調査をおこなった。
 具体的な作業としては、『鳩翁道話』の版本を複写したカードを作り、それによって、『鳩翁道話』に使用されているすべての漢字をカード化し、漢字の代表音訓によって五十音順に分類、配列する段階までを終了した。『鳩翁道話』に用いられている漢字は、ことなり字数にして約1780字であり、字種とその音訓のいずれの点でも特殊なものは見られず、ほぼ近世の常用の漢字使用を反映しているものと判断できる。