表題番号:1997A-046 日付:2002/02/25
研究課題ウル第3王朝時代ウンマにおける文書管理官
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 前田 徹
研究成果概要
ウル第三王朝時代ウンマ市の文書管理官(GA2-dub-ba)は、ウルシャラとその子ウルヌンガルが知られる。ウルシャラはシュルギ33年からアマルシン8年まで約26年間その職にあり、その年に息子のウルヌンガルと交代した。ウルシャラの子ウルヌンガルは、父の職を継ぐ前のアマルシン1年から、すでに父の下で補佐的な役割を果たしていた。ウルシャラ以前に文書管理官が誰であったか不明である。
 文書管理官は会計文書の管理に関わる。例えば、銀をウルエエなる人物からウルギギルが受領して自らの会計簿に入れたとき、文書管理官はその銀の移動を確認するために印章を押している。別の例では、ウルアムマの会計簿にある大麦で、前年度からの繰り越し分の中からすでに別の人に支出した分があり、文書管理官は、この大麦の移動を記録した粘土板を取って保管していた。会計文書に敢えてそのように記すのは、その文書をすでに調査し確認済みであることを示すためであろう。このように文書管理官の任務は経済記録の保管・維持であった。これに関連することとして、文書管理官は、粘土板を保管するための葦篭を作る材料となる葦類を受領している。
 文書管理官への土地支給や大麦支給などその地位の高さを窺える史料は現在のところ存在しないが、文書管理官はウンマのエンシに対して「あなたの奴僕」という銘がある印章を使用したので、ウンマの行政機構のなかでエンシの側近として高い地位にあったことは確かであろう。彼らの地位は、ウルの王に属して活躍する役人よりは低かったと思われる。ウンマにおいては、アピサル市区には、家畜や耕地などに関してウンマ市区とは別の責任者がいた。しかし、文書管理官は、エンシ直属の役人として、ウンマ市区とアピサル市区の区別なく、両地区に関与した。
 銅製品が造られたとき、文書管理官が倉庫長と共にその重さを量る事例が多い。計った記録を文書管理官が保管し、銅製品そのものは倉庫長が受け取ったのであろうか。この事例の意味するところは、不祥と言わざるを得ない。
研究成果の発表
1998年3月 「複合都市国家ラガシュ」『史朋』30 (北海道大学東洋史談話会)