表題番号:1997A-042 日付:2003/01/07
研究課題ジョルジュ・バタイユとミシェル・レリス―「ドキュマン」誌の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 千葉 文夫
研究成果概要
1920年代から30年代にかけてのアヴァンギャルド運動についての研究を進めるなかで、「ドキュマン」誌はどうしても研究対象として取り上げなければならないもののひとつである。ミシェル・レリスなどのシュルレアリスム運動を離れた詩人たちが参加しているというだけの理由によるものではない。この雑誌はアヴァンギャルド運動の機関誌ではない。レリスが指摘するように、これは考古学・美術史学・民族誌学などの分野におけるこの時代の新たな学問研究の動向を示すものであると同時に、文学と芸術における批評的意識の過激な展開を体現するというヤヌス的な顔をもっており、その点にこそ特異性が認められるのである。筆写はすでに「ヤヌスの頭―《ドキュマン》誌(1929-1930年)の周辺」(「早稲田フランス語フランス文学論集」第一号)において、この特異性についてのおおまかなエスキースを試み、引き続き「イコンの生成あるいはアセファル像の出現」(「早稲田フランス語フランス文学論集」第四号)において、この雑誌に掲載されたジョルジュ・バタイユの論考の部分的な分析を試みた。今回は、この雑誌の方向性を提示する上で文字どおり原動力となったバタイユとレリスの二人のテクスト的連関に焦点をあて、「斬首」の主題を中心とする力線の形成過程を追ってみた。「斬首」の主題はバタイユにとっては1930年代後半のアセファルをめぐる思想形成に深く結びついている。またレリスにとってはやはり同時期に出版された『成熟の年齢』の主導動機ともいえる役割を果たすことになる。