表題番号:1997A-032 日付:2002/02/25
研究課題民事訴訟における事実認定過程の研究―弁論評価を中心に
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 髙田 昌宏
研究成果概要
「民事訴訟における事実認定過程」は、裁判官が争いのある事実の存否を、当事者によって提出された証拠資料とその他審理に現れた一切の資料(弁論の全趣旨)を斟酌して判断するという形で行われます(民訴247条)。私は、裁判官による事実認定過程の適正さの確保が判決結果の妥当性を保証するとの前提から、いかに事実認定過程の適正化を図るかを中心に考察を行ってきました。具体的な考察の方法としては、事実認定の過程を、①証拠調べの結果得られる証拠資料からの裁判官の判断形成と、②その他の資料(弁論の全趣旨)に基づく判断形成とに分け、その双方から問題にアプローチしてきました。
 まず、①との関連では、証人尋問の結果による事実認定―とくに民訴205条による書面尋問の制度の下での事実認定に焦点をあて、母法ドイツ民事訴訟法による書面尋問制度の比較法的研究を行ってきました。現在、この研究は、ドイツの制度の沿革および発展過程、理論的問題の整理がほぼ完了する段階にきており、それが終わり次第、わが国の書面尋問制度のあり方、同制度の運用の適正化の検討に着手する予定です。
 ②との関連では、とくに当事者の弁論からの事実認定、それも当事者からの事情聴取による事実認定の場合に注目し、ドイツの当事者聴聞(ParteianhÖ rung)の制度を考察の出発点に置いて研究を進めてきました。当事者聴聞は、訴訟関係を明瞭にするために行われるもので、わが国でも、弁論準備手続などの争点整理段階で活用されていると思われますが、この法的性質を単なる釈明処分と解してよいのか、実質的に証拠調べとして機能しているのではないか、もし後者なら、当事者聴聞から心証形成する処理が妥当かを考察する必要があると判断し、この点について、この一年収集したドイツ文献を手掛かりに、目下、ドイツの理論・実務状況の検討・整理を進めています。