表題番号:1997A-026 日付:2002/02/25
研究課題刑事訴訟における当事者の協議
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 田口 守一
研究成果概要
1.刑事訴訟における当事者主義の研究は時代の課題であるとの認識から、刑事訴訟における当事者の「自己決定」の可能性と限界を明らかにすることを目的として研究を進めている。そのための比較法研究としてドイツ法における「非公式協議(Absprache)」を研究しておく必要がある。1990年のドイツ法曹大会で「刑事手続における合意」が検討されたが、批判的な意見が多数を占め、1991年の連邦通常裁判所の判例も、取引訴訟に拒否反応を示した。しかし、実務においては特に量刑をめぐる当事者の協議は広く実施されているようであり、その実態解明はなお今後の課題である。
 2.問題は、当事者の協議論の背後には刑事訴訟目的論があることである。そこで、協議論の詳細に立ち入る前に、そもそも刑事訴訟の目的をどのように理解すべきかという根本問題を再検討せざるをえない。しかし、この点についての日本の議論は極めて停滞している。そこで、まずもって訴訟目的に関するドイツの戦後の学説を概観することとした。その結果、近時のドイツほうにおける訴訟目的としての「法的平和」概念に示唆をえつつも、日本法としては「法的社会的秩序の創出による刑事事件の解決」を訴訟目的とすべきであるとの結論に達した(田口「刑事訴訟目的論序説」『西原春夫先生古稀祝賀論文集第4巻』参照)。これによって、刑事訴訟において当事者の協議を問題とする理論的基礎が築かれたものと考えている。
 3.他方、現在国会に組織犯罪対策法案が上程され目下の緊急課題となっているが、組織犯罪に対する手続法的対策としてはいわゆる「刑事免責」も避けることのできない問題であり、この問題の根本にも当事者の処分権問題が横たわっている。そこで、刑法学会において刑事免責の報告をおこなった(田口「立法のあり方と刑事免責・証人保護等」刑法雑誌37巻2号参照)。これも当事者主義論の中に位置づけされるべき問題と考えている。
研究成果の発表
1998年2月 田口守一「立法のあり方と刑事免責・証人保護等」刑法雑誌37巻2号
1998年3月 田口守一「刑事訴訟目的論序説」『西原春夫先生古稀祝賀論文集第4巻』