表題番号:1997A-025 日付:2002/02/25
研究課題組織犯罪・経済犯罪における個人帰責と集団帰責
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 髙橋 則夫
研究成果概要
本研究は、二つのアプローチから構成され、一つは、組織犯罪・経済犯罪自体の刑法解釈論的研究および犯罪学的・刑事政策的研究であり、一つは、現行刑法の正犯論・共犯論の枠組みにおける刑法解釈論的研究である。今年度は、「他人の実行に対する自己の刑事責任」という視点から、とくに、後者のアプローチを行った。
 まず、ドイツにおける壁射手判決および廃棄物処理に関する判決について、ケルン大学のヴァイゲント教授をお招きし、講演をしていただいた。前者は、旧東独の組織犯罪であり、後者は、環境刑法に関わる公務員犯罪・企業犯罪である。両判決において、ドイツ刑法における間接正犯の概念が拡大されていることが示された。
 次に、共同正犯の帰属原理について考察を加えた。共同正犯の法効果は「一部行為全部責任」であるが、この根拠については依然として不明確性が残っている。そこで、「適法行為と違法行為の共同正犯」「過失行為の共同正犯」「重複的実行行為の共同正犯」のそれぞれについて検討した。これらの問題については、近時わが国およびドイツにおいて重要な判例が出ており、これらの判例分析の結果、共同正犯における「一部行為全部責任」の根拠は、共同者の共謀に基づく相互的な行為帰属にあると結論づけた。共謀によって相互的行為帰属が行われた場合には、共謀によって共同意思主体が形成されたといってよいだろう。組織犯罪・経済犯罪における集団帰責を考える場合、共同意思主体説的な要素が重要な役割を果たすように思われる。
研究成果の発表
1997年7月 比較法学31巻1号 翻訳「トーマス・ヴァイゲント『ドイツ刑法における間接正犯の新しい形態』
1998年3月 西原古稀論文集2巻 「共同正犯の帰属原理」