表題番号:1997A-024 日付:2002/02/25
研究課題マーストリヒト条約の改正によるEU法秩序への影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 須網 隆夫
研究成果概要
マーストリヒト条約改正のために1996年3月より開始されたEU加盟国間の政府間会議は、1997年6月に合意に達し、同年10月に正式に改正条約が調印された。同条約は、アムステルダム条約と一般に呼称されている。アムステルダム条約は、ECの意思決定手続の改善(共同決定手続の簡素化・理事会における特定多数決の適用範囲の拡張など)・共通外交安全政策の改正・司法内務協力のうち難民政策に関する部分の共同体化など相当数の成果をあげた。しかし他方、東欧諸国の新規加盟による加盟国数の増加に対する機構改革の点では、なお不十分さを残している。同条約付属の議定書は、加盟国数が20を越える1年前に条約改正の為の政府間会議が再度開催されることを予定しており、更なる条約改正が近い将来行われることは間違いない。
 アムステルダム条約の内容をどのように評価するかについての議論には、様々なものがある。不十分ながらもEUによる欧州統合をより進める方向への前進であり、不十分さは全加盟国の同意を必要とするという条約改正の性格から不可避なものであると評価する立場が比較的多いが、他方には、難民政策のEC条約内への取り込みの内容が十分ではないために、既存の共同体法秩序の性格が歪められることにならないかという見解もある。
 本研究においては、アムステルダム条約の成立に至る経緯及び条約の内容検討を主として行ってきた。今後は、それらの基礎的研究を前提に、EU/ECの国際機関としての性格への今回の改正の影響を考察していきたい。
研究成果の発表
1998年3月 (共著)統合ヨーロッパの焦点―ユーロ誕生をにらむ産業再編(ジェトロ)