表題番号:1997A-023 日付:2002/02/25
研究課題国際紛争の平和的解決手段としての周旋と仲介について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 島田 征夫
研究成果概要
国際紛争の平和的解決手段としての周旋と仲介は、伝統的なもので、従来外交交渉とともに国際の平和と安全の回復に貢献してきた。周旋と仲介は、それぞれ第三者(国)が紛争当事者の間に入って紛争解決を促進するものであるが、理論的には、周旋は、場所を提供するなど解決を側面から助けるもので、仲介は、当事者の主張の調整や条件の提示など両者の中に入って行われるものである。しかし、両者は、明確な実定法上の根拠をもたず未分化であり、もっぱら第三者の関わり合いの程度によって区別されるにすぎないものであるとされてきた。
 本研究は、このように位置づけられてきた周旋と仲介の概念の整理と再検討を行うものである。本年度は特に日露戦争時におけるアメリカ大統領の日本とロシアとの間の調停活動をフォローし、この点を洗い直す作業を行ってみた。これとの関連で、本年1月に国際的に問題となった国連によるイラク査察についても関心をもった。それは、国連事務総長による紛争の解決が見事に功を奏し、紛争の激化が未然に防がれたからである。
 周旋と仲裁は、前述の通り伝統的なものであるが、最近では国連による調停作業が頻繁に行われまたそれに大きな期待が集まりつつある。しかし、国連の活動は本来国連憲章第6章によるべきであって、国連事務総長の活動は補佐的なものと言われる。とりわけ五大国が関わる紛争には国連は無力化するとも指摘されている。その意味で、周旋と仲介の見直しあるいは再検討とともに、国連による紛争解決はきわめて注目すべきもので、本研究の課題の成果として予定している論稿は、こうした傾向も視野においている。