表題番号:1997A-015
日付:2002/02/25
研究課題市場、企業の組織構造、人的資源管理の相互依存関係
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 政治経済学部 | 助教授 | 村上 由紀子 |
- 研究成果概要
- 企業の人的資源管理のうち、今年度は採用、配置転換、昇進に焦点をあて、それらが企業の生産する財やサービスの種類によって、あるいは生産物市場の性質の違いによって、また、企業の組織構造の違いによってどのように異なるのか、生産物市場、組織構造、人的資源管理の間に補完的な関係があるのかについて、理論的、実証的に考察した。
まず、「補完性」に関する近年の理論的文献をサーベイし、この研究のための概念的枠組みを固めた。そして、日本企業の採用、配置、昇進に関する従来の経験的研究の成果を上記の観点から見直し、何か特徴的なことが見いだされるか考察した。さらに、手持ちの企業内移動、企業間移動に関するデータを産業別、企業規模別に分析した。
その結果、製品・市場戦略の違いによって横の移動(配置転換)の範囲や頻度が異なること、組織構造の異なる大企業と中小企業では配置転換と昇進の関係、採用と昇進の関係、配置転換と採用の関係が異なることが明らかにされた。これら導きだされた特徴は、分業を行い、かつ補完性のある分業の単位間の水平的調整も垂直的調整も行うという組織戦略から生じていると考えられ、また、その分業における作業の分け方、分業の単位間の補完性の有無は、企業の製品戦略や市場戦略によって異なると考えられる。したがって、企業によって、同じ名称の職種に従事する労働者でもOJTで養成されるスキルに違いが生まれ、そのことが企業間移動や中途採用を妨げる要因になっているとも考えられる。
これらの結果をさらに、個別企業のヒアリング調査から検証すること、また、今年度は人的資源管理として採用、配置転換、昇進のみを対象にしたが、報酬制度に関しても同様の考察を加えることが今後の課題である。
研究成果の発表
1998.1.15 「転職に関する一考察」『早稲田政治経済学雑誌』第333号
1998.6.6 「補完性からみた労働移動の分析」『日本労務学会第28会大会研究報告論集』