表題番号:1997A-012
日付:2003/10/27
研究課題政府広報電子化の日独比較基礎研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 政治経済学部 | 教授 | 縣 公一郎 |
- 研究成果概要
- 1997年度は、政府広報電子化の日独比較基礎研究の枠内では、政府広報分析の基礎となる理論的枠組の構築と、日独両国政府広報電子化の実際的利用に基づく状況分析を行った。政府広報は、少なくとも、実際に行った政府活動の実績公表と、これから着手しようとする活動に関する事前公表という2つの側面を持ち、同時にこれとの密接な関連において、過去の活動に対するフィードバックと、将来の活動に関するフィードフォワードという2つの重要な機能を担っている。従って、政府と社会のコミュニケイションを深化させる意味で、政府広報は、現代において極めて重要な意義を帯びている。政府広報は、少なくとも6つの観点から考察可能である。①広報の背景となる現状認識と広報の目的、②広報の対象集団、③広報の主体、④広報の方法、⑤フィードフォワード・バックへの対応とその情報処理方法、そして⑥広報効果の把捉方法と効果自身のフィードバックである。
こうした枠組において、広報の電子化は、インターネット上ホームペイジの活用により、社会の側でのコンピュータリテラシーを前提とする限り、あらゆる人々に24時間中、政府自身が直接の広報主体となって、広報内容を独自に規定しつつ情報提供し、直接にフィードフォワード・バックを受ける形態を採った、非常に有効な広報手段と解釈しうる。しかも、電子化されている限り、インターネット上であらゆる情報にアクセス出来るという点が、空間を超越した広報の最大の利点である。
日独両国の中央政府広報は、情報提供の範囲と精度において、日進月歩を遂げているが、日本が統計情報の豊富さを誇るのに対して、ドイツでは、法令・法案の公表範囲の広さを特徴とする。ここに一つの広報に対する方針が現れている。ドイツで、特に法案が公表される場合にフィードフォワードの可能性を提示しているのに対して、日本では、どちらかと言えば結果に対する情報提供の側面が強い。他方、個人的経験の範囲では、電子メイルによるフィードフォワード・バックに対し、ドイツの方が遥かに迅速に反応している。社会との双方向性を拡張する上で、日本の広報電子化が克服すべき問題点が、ここに胚胎しているといえるだろう。なお、本研究成果は、和文論文として取り纏め次第公表したい。