表題番号:1997A-002 日付:2002/02/25
研究課題アメリカにおける行政決定と司法審査
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 大濱 啓吉
研究成果概要
わが国の行政法理論が明治憲法下にドイツ法の強い影響の下に形成されてきた(立憲君主型行政法理論)が、その枠組みは今日においても基本的には変わっていない。そのため、天皇の手足である官吏の行為(行政行為)には公定力がある(誤りがない)という前提で出来上がっている。これに対して、アメリカにおける行政決定は、連邦行政手続法(APA)の規律のもとに、法定の手続を通して行われる仕組みである。私の問題意識は、日本国憲法の原理に即した行政法理論の構築にあるが、本研究はその基礎的作業として「アメリカにおける行政決定と司法審査」の理論研究を試みたものである。もっとも、テーマが大きいこともあって、本年度の研究では1993年に成立をみた行政手続法を素材に、「アメリカの行政決定」と「わが国の行政決定」の比較にとどまり、司法審査の部分までは至らなかった。
 本論文では、比較法的視座から、アメリカ行政法の発展を歴史的に跡づけながら、60年代にアメリカ行政法の基本構造が転換し、そのことが行政決定のあり方に重大な影響を与えた点を指摘した。デュー・プロセス概念の変容はその証左である。本研究では、デュー・プロセスの根底にある手続価値を分析することによって、APAの決定枠組み(審決と規則制定)が判例法理の発展によって崩壊することの意味を論究した。最後に、公定力概念が理論的に行政手続の思想と相いれないことを論証し、行政手続法と行政事件訴訟法との整合性の問題が今後のわが国行政法理論にとって大きな課題になるであろうことを指摘した。従来、このような視点からの研究はわが国には全くなかったものであり、今後本研究で触れることのできなかった司法審査の問題に取り組みたいと思っている。
研究成果の発表
97年10月 早稲田政治経済学雑誌332号