表題番号:1996B-038 日付:2002/02/25
研究課題エジプト マルカタ遺跡出土彩画片の研究と復元
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 吉村 作治
(連携研究者) 文学部 教授 高橋 榮一
(連携研究者) 理工学部 助教授 西本 真一
研究成果概要
マルカタ南「魚の丘」遺跡出土の彩画片は、新王国第18王朝時代にアメンヘテプ3世が当遺跡に造営した建物に描かれていた壁画の一部で、断片的に残存しているにすぎず、全体像の復元が課題となっている。また、彩画片は泥質の下地に描かれているため非常にもろく、いかに保存修復を行っていくべきか検討を続けている。復元に関しては、断片から外国人の姿が描かれていたことが分かっていることから、同時代の墓や神殿に描かれた外国人の姿の描写を収集し、データ・ベースを作成した。これらの資料を基に描かれていた外国人の民族の特定を進めている。また、建造物と壁画の復元と、建造物の時代背景の検討に向けて、関連文献の収集に努め、データ・ベースを作成している。
 保存修復については、まず、古代の彩色技法の解明に向けて、肉眼による観察の他に、科学技術を用いた技法の観察と顔料分析の応用を試みた。具体的には、光学調査(赤外線写真、X線透過写真)による顔料や下地の観察、PIXEやX線マイクロ分析による顔料分析などを試みた。今回は科学技術を用いた研究が古代エジプトの資料に応用できるかどうかを確かめる試みであり、サンプル数が限られるため、全体像の把握には至らなかったが、部分的には顔料組成の違いや重ね塗りなどについて興味深い知見を得ることができた。
 1995年度に発足した図像学研究会では、研究会を年に4回開催した。1996年度には、「魚の丘」建物址の性質解明に向けての研究の途中経過として、ルクソール西岸における遺構の立地の検討や建造物の形態等の建築学的考察のこれまでの成果が報告された。1997年度には、年間課題を「科学技術を用いた彩色技法の研究」とし、先述の分析の応用結果が報告された。
研究成果の発表:
『図像学研究会報告 No.1:第1期研究課題(1995-1996) マルカタ南「魚の丘」遺跡出土彩画片の研究』エジプト学研究別冊第2号 早稲田大学エジプト学会 1998年3月31日発行
『図像学研究会報告 No.2:第2期研究課題(1997) マルカタ南「魚の丘」遺跡出土彩画片の科学技術を用いた彩色技法の研究』 エジプト学研究別冊第3号 早稲田大学エジプト学会 1998年7月発行予定