表題番号:1996B-037 日付:2002/02/25
研究課題末梢自律系の諸指標を用いた情動・ストレスの評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 山崎 勝男
(連携研究者) 人間科学部 教授 鈴木 晶夫
(連携研究者) 人間科学部 助手 正木 宏明
研究成果概要
各種の情動刺激やストレス課題を与えながら、レーザー血流計で指尖の組織血流量を連続的に測定し、同時測定した指尖容積脈波の変化パタンと相互比較をした。一般的に、指尖容積脈波は刺激提示時点後から基線変動が生じ、それに重畳した形で波高も同時に減少する。適当な時間経過後に基線は再度刺激提示前のレベルに戻り、波高は少し遅れて刺激提示前の波高値にまで回復する。この変化パタンの生理学的な機序は、交感神経の緊張による末梢血管収縮と考えられており、末梢血流量の減少を示すものと理解されている。しかし、指尖容積脈波の変化パタンは複雑で、必ずしもこのような単調減少~単調回復を示すデータばかりが得られるわけではない。このような理由から、指尖容積脈波の計量測度は今日までかなり困難視されてきた。しかしながら、使用したレーザー血流計では、変化する組織血流量のパタンを単純明快にトレースすることができた。トレースは複雑な変動を示す指尖容積脈波の個々の波高と非常に高い一致率を示した。一方、前額部から測定した容積脈波には、事態によって一過性の振幅増加が認められた。この様相の生理学的な機序には、当然末梢血管の拡張-すなわち血流量の増加-が想定される。同時に測定したレーザー血流計による血流量にも、確かな組織血流量の増加が観察されていた。このように情動刺激やストレス課題では、事態に応じて指尖部と前額部の組織血流量には方向性を異にする様相が同一の時間帯に観察された。この方向性の違いは、心理過程に対応する末梢循環に関して、新たな研究の展開と期待を抱かせるものである。これら指標の変動、変化を健常者とストレス疾患の患者で比較することにより、疾患特異性を明らかにすることができるものと思われる。同時に非侵襲的な新しい自律神経機能検査法を関連領域に提言できるものと期待される。
研究成果の発表:
山崎勝男・正木宏明・高澤則美 1997/5 レーザー血流計による末梢循環測定の利点.第15回日本生理心理学会学術大会. 生理心理学と精神生理学,1997,15:96.
山崎勝男・正木宏明・高澤則美 1997/9 レーザー血流計による末梢循環測定の把握.第61回日本心理学会大会発表論文集.pp.427.
山崎勝男 1997/9 不安障害の生理心理学.宮田 洋(監修)柿木昇治・山崎勝男・藤澤 清(編集) 新生理心理学 2巻,北大路書房,pp.128-145.