表題番号:1996B-029 日付:2002/02/25
研究課題無機層状物質の層間・界面の設計
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 黒田 一幸
(連携研究者) 理工学部 助教授 菅原 義之
(連携研究者) 教育学部 専任講師 小川 誠
研究成果概要
無機層状物質の層間・表面は機能発現の特異な場を提供している。層間における有機分子の配向制御による光機能発現や、層間の官能基の固定による分離機能の発現などが期待される。従来、層間化合物形成能を生かしたナノ複合体形成の研究は数多くあるが、本研究では、更なる展開の一つとして、層間あるいは層表面における、より高度な構造制御の可能性を探り、機能制御の高度化の手法を見出すことを目的とした。本研究では、無機層状物質の中でも特に層状ケイ酸塩に着目し、その層間化合物形成能を生かした設計を行った。
 層間に界面活性剤イオンを導入することにより疎水化し、その有機化した層間にアゾベンゼンを導入し、層間で光異性化することを初めて明らかにした。またクラウンエーテルの取り込みも可能であることを示した。この結果をさらに発展させ、クラウンエーテルが特定のイオンと安定な錯体を形成する性質を利用して、クラウンエーテル共存下での層間イオン交換反応が進行するという新しい層間化合物合成法が本研究より生まれた。
 また本研究の成果として、カオリナイトーメタノール層間化合物の合成とこれを中間体としたゲスト交換法による種々のカオリナイトー有機層間化合物の合成に成功した。従来不可能とされてきた種々の有機ゲスト分子の取り込みが可能となり、層間の修飾技術の高度化を図ることができた。
 さらに層状ケイ酸塩マガディアイトを用い、その層間表面をシリル化処理した。アルキルジメチルクロロシラン及びアルキルトリクロロシランによるシリル化を行った結果、層間の親水・親有機的性質の制御が用いるシリル化剤の種類と量によって制御可能であることを明らかにした。この性質を生かし、アルコール及び炭化水素の吸着実験を行った結果、アルコールの選択的な取り込みを明らかにすることができた。これは層間の親水・親有機的環境の制御の結果であると考えられる。