表題番号:1996B-025 日付:2002/02/25
研究課題フォトルミネセンス法によるSiO2薄膜中の欠陥の検出ならびに構造解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 大木 義路
(連携研究者) 理工学総合研究センター 教授 浜 義昌
研究成果概要
本年度の研究において、強力な紫外―真空紫外光であるエキシマレーザ光やシンクロトロン放射光を用いることにより、a-SiO2薄膜からでも充分な強度を有したフォトルミネセンスが得られることが証明され、今まで、有力な評価手段のなかったa-SiO2薄膜の点欠陥に対する検出手法としてのフォトルミネセンス法が確立できた。さらに、この手法を用いて、シリコン熱酸化膜やSIMOX埋め込み酸化膜を対象として、その膜の製法に起因して膜が本質的に含有する欠陥とイオン注入や高温熱処理等のデバイス製造プロセスにより生じる欠陥の検出と欠陥構造の同定を行うことができた。
 イオン注入されたシリコン熱酸化膜にKrFエキシマレーザ光を照射することにより三つの発光帯(4.3 eV、2.7 eV、1.9 eV)を観測した。また、4.3 eV発光の励起帯が約5.0 eVと7.3 eVにあることをシンクロトロン放射光を用いた発光励起測定から観測した。さらに、シングルバンチ運転下のシンクロトロン放射光(光パルス幅約0.55 ns)を用いた時間相関単一光子計数法等の測定により4.3 eV発光の寿命は5.0 eV光励起では約2.6 nsであり、7.3 eV光励起では約1.9 nsであること、2.7 eV発光の寿命は約6 msであることを明らかにし、これらの発光がイオン注入によりシリコン熱酸化膜に誘起された酸素空孔に起因していること、および、イオン注入により熱酸化膜に誘起された欠陥の消滅に対して、高温での熱酸化中に酸化膜に溶け込んでいた酸素が重要な役割を果たしていることを明らかにした。
 つぎに、シリコン基板への酸素イオン注入後、高温の熱処理により形成されたSIMOX埋め込み酸化膜を試料として、埋め込み酸化膜上のSi層をKOH溶液でエッチング除去したのち、KrFエキシマレーザ光励起下で発光を観察すると、4.3 eV発光の強度はSIMOX埋め込み酸化膜の残存膜厚に対してほぼ直線的に比例することから、酸素空孔は酸化膜中にほぼ均等に分布しているとしていると推察できる。また、イオン注入のされていないシリコン熱酸化膜ではこれらの発光が観測されないことから、SIMOX埋め込み酸化膜はシリコン熱酸化膜より遥かに酸素欠乏性の程度が高いことを明らかにした。
研究成果の発表:
K. S. Seol et al.
Concentration of neutral oxygen vacancies in buried oxide formed by implantation of oxygen
J. Appl. Phys., Vol. 83, No. 4, 1998, 2357-2359
M. Fujimaki et al.
Structures and generation mechanisms of paramagnetic centers and absorption bands responsible for Ge-doped
SiO2 optical fiber gratings Phys. Rev. B, Vol. 57, No. 7, 1998, 3920-3926
H. Nishikawa et al.
Photoluminescence of oxygen-deficient-type defects in a-SiO2
J. Non-Cryst. Solids, Vol. 222, 1997, 221-225
K. S. Seol et al.
Thermal annealing behavior of defects induced by ion implantation in thermally grown SiO2 films
Microelectronic Eng., Vol. 36, 1997, 193-195
K. S. Seol et al.
Effect of post-oxidation on the oxygen deficiency of buried oxide
Mat. Res. Soc. Symp. Proc., Vol. 446, 1997, 219-223
M. Fujimaki et al.
Generation mechanism of germanium electron center in Ge-doped silica glass.
International Workshop on “Structure and Functional Optical Properties of Silica and Silica-related Glasses”., 1997, 1-4