表題番号:1996B-014 日付:2002/02/25
研究課題環境法における市民参加の法制化に関する比較法的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 楜澤 能生
(連携研究者) 法学部 教授 牛山 積
(連携研究者) 法学部 教授 藤倉 皓一郎
(連携研究者) 法学部 教授 直川 誠蔵
(連携研究者) 法学部 教授 首藤 重幸
(連携研究者) 法学部 教授 北山 雅昭
研究成果概要
平成8年度、9年度を通じて、まず日本の動向については、市民のイニシアチヴを位置づける環境政策に与えた影響を分析した。さらに岩手県盛岡市、雫石町を調査し、森林生態系保護地域指定の経緯、国見スキー場開発、奥産道問題において、行政と市民運動の関わりを分析し、また地元住民と、都市の自然保護運動の担い手の対応を比較検討し、双方の自然への関わりのあり方と自然保護機能について考察した。さらに兵庫県神戸市、加古川市、多可郡における「豊かな森づくりプラン」実施例において行政と市民の協力関係を観察した。
 ドイツについては、侵害調整制度の検討を通じて、我が国における侵害調整措置の必要性と、制度化に当たっての、開発事業者・行政・市民それぞれの責任・役割の検討を行った。また戦後ドイツにおけるエネルギー政策の歴史を、原子力を中心に検討し、エネルギー政策の変更や、安全基準の変更により、操業中の原子力発電所の操業許可を行政庁が取消し、もしくは撤回した場合に発生する法律問題、特に損失補償問題に関する論議を検討した。さらにノルトライン・ヴェストファーレン州の景観計画について調査研究を行った。
 次にアメリカについては、市民訴訟条項の適用について最近一見矛盾する判決を下している連邦最高裁の判決論理と、より一般的に判決に現れた「自然観」について検討した。さらに大規模被害を生むような事件で、裁判所での訴訟手続が広く利害関係者の権利・利益を話し合いによって調整するために使われ、包括的な和解が成立した事例(たばこ訴訟)について、和解交渉に加わった市民団体がどのような役割を果たしたかを研究した。
 ロシアについては、イルクーツク州バイカル湖における環境保護市民団体の活動につき、調査研究を行った。
研究成果の発表
牛山 積
1997年「公害被害者救済システムに関する理論的諸問題と公害裁判の環境政策に及ぼした影響」Вестник Московското Университета 97年2号
藤倉皓一郎
1997年「環境訴訟における当事者適格」法律のひろば50巻6号
〃「アメリカにおけるタバコ訴訟の展開と前面和解」ジュリスト No.1118
〃“Standing for Nature in the United States Supreme Court” The Japanese Journal of American Studies No.8
首藤重幸
1997年「ドイツ原子力法をめぐる議論の動向(2)」比較法学 31巻1号
〃「エネルギー政策と原子力法制」渡辺重範編『ドイツ・ハンドブック』(早大出版部)
北山雅昭
1997年「環境・エコロジーと法」渡辺前掲書
楜澤 能生
1997年「ドイツの自然保護政策と農業」平成8年度 里地自然等自然環境保全調査報告書(農林中金総合研究所)