表題番号:1996B-009 日付:2002/02/25
研究課題高齢者の失禁行動への精神生理学的介入
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 児玉 昌久
(連携研究者) 人間科学部 教授 上田 雅夫
(連携研究者) 人間科学部 助手 中宮 敏之
研究成果概要
高齢化とともに種々の心身機能が低下してゆくが、その中でも排泄の制御の崩壊はプライバシー、個人の尊厳、生活行動全体への動機や自信を損なう大きな問題である。この研究は排泄制御機構の崩壊による失禁を、精神生理学的手法を用いて改善することを目的として行われた。
 第一段階は精神生理学的手法の対象となる高齢者の失禁タイプの同定を目標とした。従来の医療モデルによる分類が単一次元で行われていないので、これを整理した結果、感覚性尿失禁、緊張性尿失禁、筋力性尿失禁、運動性尿失禁、習慣性尿失禁、依存性尿失禁の6タイプに分類した。これら6タイプのうち後3タイプは環境との交互作用による失禁なので、精神生理学的介入の対象から除外した。
 第二段階は精神生理学的介入方法の選択および試行を行った。膀胱膨満感の自覚できない感覚性尿失禁者に対しては、パヴロフの古典的条件付けによる訓練を行うこととし、そのための機器の考案、試作を作った。制作された失禁バイブレータの構造は、襁褓内部に2本の金属テープを漉き込んだ湿度センサを装着し、小型モーターを内臓した回路ボックスに接続されたものである。モーターは失禁による金属テープ間の電流の短絡により作動して振動し、無条件刺激として使用するメカニズムであった。試行の結果、適切な振動強度の呈示は、皮膚感覚の閾値の高い高齢者にも、有効に作用することが明らかにされた。
 尿道括約筋の筋力低下による筋力性尿失禁者に対しては、すでに一般化しつつある高齢者にバイオフィードバックによる訓練が可能か否かの吟味であり、十分可能という結果が得られた。これらの精神生理学的介入方法は、器機の操作性、サイズ、価格など改善を要する点はあるものの、原理、方法の点できわめて有効なものであり、問題点を改善すれば、大いに活用が期待できると考えられる。
研究成果の発表
96年9月 児玉昌久 上田雅夫
失禁改善の試み(1):行動的モデルの提案 日本介護福祉学会第4回大会発表論文抄録集
96年9月 児玉昌久 上田雅夫 
失禁改善の試み(4):施設要改善機器の試作 日本介護福祉学会第4回大会発表論文抄録集
96年10月 上田雅夫 児玉昌久
全国特別養護老人ホームの排尿介護について:尿失禁対策プログラムの有効性の検討 日本老年社会科学会第38回大会報告要旨集
97年3月 上田雅夫 児玉昌久
失禁改善機器の改良:排泄自立訓練プログラムの実施および普及事業 平成8年度老人保健健康増進等事業報告書 第5章、54-66。
98年3月 児玉昌久 中宮敏之
排泄自立訓練プログラムマニュアル:財団法人パブリックヘルスリサーチセンター